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 | 衣服に付いた油汚れ・油染みの落とし方
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はじめに
油を使ったドレッシングやソース、たれ、チョコレート、ラー油などが飛び跳ね、衣服についた場合、こうした油性のシミをきれいに落すのはなかなか大変なものです。そこで今回は油性のしみの落し方を一から解説します。油性のシミを落とすのに便利な道具やしみを落す際のポイント、しみの見分け方や出先でシミがついた時の対処法なども詳しく取り上げます。
汚れの種類
油汚れは水で洗ってもなかなか落ちないものです。これは水と油の関係を思い出していただくとよくわかります。水と油は交じり合わないので、油性の汚れは水で洗い流そうとしてもなかなか溶けだしません。逆に油性の溶剤を使用すればおなじ油性の汚れはすぐに溶けだしきれいに落ちます。
では油性と水性の両方の特徴を持つ汚れの場合はどうしたらいいのでしょうか。その場合はまず最初に油性の汚れを落とし、続いて水性の汚れに取りかかります。先に水で洗うと油汚れと水がくっついて余計に落としにくくなります。
衣服に付いた油性のシミの取り方
油性のシミ取りの手順
まずはウェス(布切れ)と後述するシミ取り綿棒、それからベンジンを用意します。ウェスやシミ取り綿棒がなければそれぞれ布切れで代用してもいいです。下の画像は油性のシミであるラー油がついたものです。

まずは油性のシミがついた面を下にしてウェスの上に乗せ、シミの反対側からベンジンをシミにたらします。そして下の画像のように上からシミ取り綿棒で叩き、下にひいたウェスとシミ取り綿棒の両方に油性のシミを移しとっていきます。

ベンジンをたらす、シミ取り綿棒で叩くを1セットとし、これを繰り返して徐々にシミを薄くしていきます。シミ取り綿棒やウェスがシミと当たる面が汚れて来たら綺麗な面に変えて叩くのを繰り返します。綺麗になったところで最後に水ですすいで終わりです。
綺麗にシミを取るなら根気が必要
ベンジンは有機溶剤の中でも比較的衣類へのダメージは少ない溶剤です。ベンジンを使ってシミを取る場合、ある程度は落とせますが、うっすらとしみが残ることもあります。こうしたシミも根気よくベンジンをつける、シミ取り綿棒で叩くを繰り返せばきれいに落すことができます。上記の場合30回ほど繰り返したところあとも残らず綺麗に落ちました。
けっこう根気のいる作業なのでもう少し手軽に済ませたい場合は少し強めの溶剤、もしくは酸素系漂白剤を使うといいでしょう。ただし落としやすい分衣類へのダメージも大きくなります。酸素系漂白剤はシミの部分に添付し、5分ほど待ってお湯でよくあらうかそのまま洗濯機にかけます。なお合成繊維を使用した衣類などではこの方法だと、色褪せたり生地が痛んだりするかもしれません。心配な方はクリーニングを利用するのが無難でしょう。
ベンジンはどこで買える?
ベンジンはホームセンターやドラッグストアなどで置いていることが多いです。今回使ったベンジンは以下のもので、ホームセンターで購入しました。

こちらは100mlと小さな容量のものです。100mlだと比較的早くなくなります。シミを取る機会が多い方は少し大きめのサイズを購入されてもいいでしょう。ホームセンターやドラッグストアによっては置いてないこともあるので、その場合はネットで購入するといいです。
あると便利なウェス
ウェストは布切れのことで機械の油をふき取ったり、汚れ不純物をふき取るのに使われます。もともとは古着や古布を再利用したものが使われてきましたが、現在ではより吸収性能を高めた使い捨ての商品も市販されています。吸収率が高いのでシミを移しとる際に下にひいておくことでしっかりとしみが吸収されます。価格もそれほど高いものではないので購入しておいてもいいでしょう。シミ取り以外でも油汚れの拭きとりなどの用途にも使えます。
たたくのに便利なシミ取り綿棒
溶剤をしみ込ませるのは布でも構いませんが、簡単に作れるしみ取り綿棒だとトントンとたたきやすくて便利です。まずはシミ取り綿棒を作るのに必要な材料を紹介します。割りばし1本と輪ゴム1個、それからガーゼもしくは古いハンカチとコットンもしくは脱脂綿を用意します。下の画像はシミ取り綿棒を作るのに必要な材料を並べたものです。

材料をそろえたらシミ取り綿棒を作っていきます。まずは割りばしの細くなっているほうをコットンで包みます。ちょうど二つ折りになるような形で丸く形を整えます。

このままだと押さえもなくすぐに外れてしまいます。そこで今度はコットンで包んだ上からガーゼで包んでいきます。そして外れないように輪ゴムでとめてシミ取り綿棒の完成です。とんとんと叩いてシミを取っていき、汚れて来たらあたる面を変えて叩いていきます。
しみ抜きの際のポイント
たたくときは周囲から中心へ
しみをたたくときは周囲から渦を描くように中心へとたたいていきます。先に中心から外側へとたたいていくとしみが周囲に広がってしまいます。
早めの対処が大事
汚れ落しは時間が経過しないうちにしましょう。時間がたてば素材への結びつきもつよくなるので、それだけ強い洗剤が必要になります。そうなると当然素材自体への影響(傷みや脱色など)も大きくなります。
エタノールを使う
エタノールとは水にも油にもとける物質で、身近なとこだとお酒やみりんの主成分としても有名です。エタノールには乳化作用と呼ばれる働きがあって、水と油の間に立って両者を結び付けてくれます。引火性が高いので火のもとには十分注意してください。
みかんの皮の絞り汁
みかんの皮にはリモネンと呼ばれる天然油が含まれています。リモネンの働きにより油性マジックの汚れなどが溶けだし、きれいに落とすことが出来ます。リモネンは洗剤などでも使用されています。
またリモネンは分子構造が発泡スチロールと非常によく似ており、発泡スチロールを溶かす働きがあります。これは分子構造が似たもの同士は互いに溶けだしやすいという特徴があるためです。
その他ポイント
ベンジンなどの有機溶剤、消毒用アルコール(エタノール)、弱アルカリ洗剤とクリームクレンザーを混ぜたもの(素材や塗料の落ちが心配な場合)など
窓ガラス、衣類(脱色、傷みの恐れがあるもの)、家具(もとの素材が痛んだり、塗料やコーティングされてるつやだし剤が落ちる恐れがあります。)、ビニールクロス(シンナーやベンジンなどの有機溶剤は素材が溶けてしまうことがあるので注意)など
マジック、ファンデーション、口紅、バター、チョコレートなど
油溶性と水油性の混ざったシミには
シミには油溶性のものと水溶性のものがあることはすでに上でも見てきましたが、どちらか一方ではなく両方の汚れの成分が混ざっているものも少なくありません。例えばマヨネーズであれば油溶性のサラダ油のほか、水溶性の食酢なども含まれています。カレーなら水のほか肉やサラダ油に含まれる油分も含まれています。こうした両方の汚れを含んだしみでは最初に油溶性のしみ抜き対策をします。
まずはベンジンで油溶性のしみを取り、ベンジンが乾けば水か中性洗剤をしみ込ませた布で今度は水溶性のしみを取り除き、最後はよく水洗いをします。
何のしみかわからない場合は?
しみに水滴をたらす
付いてすぐのしみなら比較的原因はハッキリしやすいものですが、帰宅後や洗濯のときに気づいたしみだと何が原因で何のシミなのかわからない場合もあります。せめて水溶性か脂溶性かどちらのシミなのかはハッキリさせたいものです。そんなときはシミに水をたらして見るといいです。水がシミにしみ込めば水溶性のシミで、水をはじけば脂溶性のシミです。それでは実際に試してみましょう。

こちらはしょうゆのシミですが、水を吹き付けるとしょうゆジミの成分が水分に溶け出し、しみが全体的ににじんできます。

一方で油溶性、脂溶性のしみの場合はどうでしょうか。上の画像はラー油のシミですが、水を吹き付けても特ににじんで色がぼやけたりもせず、変化がありません。このように油溶性かどうかは水を吹き付けるとこで判断できます。
ベンジンをつける
ほかにもベンジンをつけて確認をする方法もあります。油溶性のシミならベンジンをつければにじんできます。水溶性のシミの場合は変化がありません。ベンジンは揮発するのが早いのでシミの汚れの成分の変性も少ないので、どのタイプのシミが確認するのに適しています。
注意点
強すぎる溶剤は使用に注意を
シンナーや除光液などの溶剤はシミを溶かす働きも強い反面、生地もいためやすいので使用は避けたほうが無難でしょう。頑固なシミにどうしても試してみたいのなら、まずは生地の目立たない部分で使ってみて傷まないかどうか確認して見るといいです。
ベンジンがおすすめ
基本的にはベンジンがおすすめです。ベンジンは揮発性が高く、すぐに揮発するので汚れの成分をあまり変性させずに済みます。ベンジンは絹やウール素材でも使えます。刺激が比較的穏やかなベンジンとはいえ、デリケートな生地などでは素材をいためてしまうこともあるので、まずは目立たない部分に少量つけて確かめて見るといいでしょう。もし傷みや脱色が出るようなら使用をやめ、中性洗剤やクリームクレンザー、もしくはそれを水で薄めたものなどに切り替えてください。試すこと自体、ためらわれる場合は有機溶剤の使用は避け、中性洗剤などを使用しましょう。
シンナーなどで手あれが心配な方は、ゴム手袋をつけてから作業して下さい。
作業をするときは窓を開けて換気に気をつけてください。
出先で便利な携帯シミ取り器
シミは時間がたつとどんどん落としにくくなるので、時間が経過しないうちに対処することが大事です。しかしながら外出時で特に油性のシミの場合は溶剤などもないためなかなか対処しづらいものです。水でも多少は落ちますがしっかりと落とすのは難しいです。そこで便利なのが市販されている携帯用のシミ取り器です。スティックタイプのものが多く、油性のシミでもペン先から溶剤が出て、トントンとたたいてしみを取ることができます。ペン先は洗うことができるものが多く、いつでも清潔に維持することが出来ます。いざというときのために1本携帯しておくのもいいのではないでしょうか。
スティックタイプでいえばドクターベックマン シミとり 携帯用 ステインペンなどが有名です。
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※ 参考文献
洗濯・衣類のきほん
科学的に正しい暮らしのコツ
ラクラク家事の本
いちばんわかりやすい家事の基本大事典
暮らしまる洗い!コツと基本120
住まい汚れスッキリ解消術
新品みたいに長持ち! お手入れの教科書
大事な服のお手入れおしゃれ帳
洗濯上手こつのコツ
この記事を書いた人

生活知恵袋
生活知恵袋の管理人で管理人の名前も生活知恵袋といいます。料理雑学研究家です。2002年より当サイトを運営。野菜を中心に食品に関する見分け方や保存方法などを、実際の検証とともに解説した記事を多数執筆。光熱費や水道代の節約、衣服や住まい、掃除に関する豆知識も紹介。
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