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冷蔵庫の電力量算定規格



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はじめに


冷蔵庫の商品説明欄などでよく見かける年間消費電力量という言葉ですが、いったいどのようにして計算しているのでしょうか。冷蔵庫にかかる電気代は外部気温やドアの開閉の回数によっても変わってきますし一様ではありません。そこで今回は年間消費電力量の算定方法についてみていきたいと思います。




算定方法を定めた規格について


冷蔵庫の年間消費電力量の算定方法は日本工業規格(JIS C 9801)「家庭用電気冷蔵庫及び電気冷凍庫の特性及び試験方法」によって定められています。

日本工業規格(JIS)
主務大臣が経済産業省の審議会である日本工業標準調査会(JISC:Japanese Industrial Standards Committee)の付議(会議にかけて議論する)を受けたのち制定する規格。主務大臣の意思、もしくは利害関係者の主務大臣への申し出によって制定手続きは開始されます。

JIS C 9801は1999年3月から採用されましたが、より実際の使用実態に即した内容となるよう2006年5月1日改正が行われました。JIS C 9801(2006年版)の消費電力量試算規程は以下の通りです。

測定基準JIS C 9801(2006年版)消費電力量測定方法
種類冷凍冷蔵庫冷蔵庫冷凍庫
「スリースター」「フォースター」機種
庫内温度冷凍室冷蔵室冷蔵室冷凍室
-18℃以下4℃以下4℃以下-18℃以下
扉開閉回数※18回/日35回/日35回/日8回/日
周囲温度30℃(180日)、15℃(185日)
周囲湿度30℃測定時;70±5% 15℃測定時;55±5%
消費電力量の表示 年間消費電力量(kWh/年)
(周囲温度30℃測定による1日当りの消費電力量180日分と 周囲温度15℃測定による1日当りの消費電力量185日分の合計)
※1 冷気自然対流方式の場合は、扉開閉は行わない。

規格では温度や湿度、扉の開閉回数まで細かく設定されています。扉の開閉回数に関していうと冷蔵庫で1日35回、冷凍庫で1日8回は人によって多い少ない捉え方が違うかと思います。毎日自炊、家族の食事の準備などをする場合は35回でも多くはないかもしれませんし、外食が中心なら実際は全然少ないと考える方もいるでしょう。あくまで平均でこのぐらいではないかと考え設定した数字なのでしょう。

設定周囲温度についてですが30℃を180日、15度を185日で計算しています。室温であり外気ではないので温度が高めなのはわかりますが冬季は周囲温度は下がりますし、30℃が半年も設定されているのはさすがに多いようにも感じます。また30度が180日、15℃が185日と2点でしか設定されていないというのもまだまだ大雑把なような気がします。細かく温度を設定して計算するとコストや手間などがかかるというのも考慮されているのかもしれません。年間消費電力量というのはあくまで目安として参考にするといいのではないでしょうか。

ちなみに上の表で出てきたスリースター、フォースターとは冷凍庫の性能を表したものです。なお保存期間については食品の種類や使用条件などによって異なるので目安程度に参考にしてください。

記号ツースタースリースターフォースター
冷凍室内の食品温度-12℃以下-18℃以下
冷凍食品の保存期間の目安約1ヶ月約3ヶ月


2006年度の改正点


次に2006年に改正されたJIS C 9801の主な変更点についてもみて行きます。周囲温度を1点から2点に、壁との設置条件、冷蔵室の庫内温度、ドアの開閉回数の変更、測定時の付加機能作動の有無などより使用実態に近くなるよう設定が変更されています。

周囲温度30℃±1℃、15℃±1℃25℃±1℃
冷蔵庫内温度4℃5℃
冷蔵庫ドア開閉数35回25回
設置条件(壁との距離)5cm30cm
測定中の付加機能作動※1ありなし
ペットボトルの投入ありなし
※1 自動製氷機能、脱臭機能等

周囲温度は全国8都道府県(北海道、宮城、東京、大阪、沖縄等の一戸建て及びマンション合計23ヵ所)の一般家庭の台所を調査し、その結果の年間平均室温等をもとに30℃180日、15℃185日と設定したそうです。旧来の25℃の1点のみの設定よりは細分化されましたが、温度設定が2点しかないのはまだまだ大雑把な感じがします。

開閉回数35回はモニター調査に基づく変更です。壁との距離は実際の家庭では5cmとより隙間のない間隔で設置されていることが多いため、壁から反射される熱の影響なども考慮して使用実態に近い状態で測定するよう変更したそうです。ペットボトルの投入とは水の入ったペットボトルを冷蔵庫・冷凍庫の容積に応じて投入することで、冷蔵・冷凍庫のなかに食品が入った状態に近づけ、測定条件をより使用実態に近づけようと設定した項目のようです。

今回の改正はより使用実態に近づけて年間消費電力量を参考価値の高い数値にするべく行われたものだといえます。実際中身を見てみても細かな条件設定が追加されていることがわかります。年間消費電力量を参考にして買ったものの実際はまったくかけ離れた電気代がかかったとなってしまうと、あまり当てにならない数値なんだなあと後でガッカリすることになるでしょう。もちろん各家庭で使用環境は千差万別なので、その通り年間消費電力量となることは少ないかもしれませんが、誤差が小さくなるよう規格を作る側も努力していることが伺えます。


2015年度の改正点


2006年に改正されたJIS C 9801ですが、2015年6月に再度改正が行われました。年間の消費電力量測定に関する主な改正点は以下の通りです。この改正により新基準での年間消費電力は平均して30%ほど高くなるようです。今回の改正は2015年2月に発行された新しい国際規格(IEC)に準拠することを目的に行われたものです。

旧JIS新JIS
周囲温度平均:22.4℃
(30℃:180日/15℃:185日)
平均:25℃
(32℃:205日/16℃:160日)
投入付加■冷蔵室:500g/75L
(PETボトル水)
■冷凍室:125g/20L
(模擬負荷1個)
■冷蔵室:12g/L
⇒ 75Lの場合900g
(PETボトル水)
■冷凍室:4g/L(製氷皿水)
⇒ (20Lの場合80g)
扉開閉回数■冷蔵室:35回/日
■冷凍室:8回/日
(各10秒/回)
■冷蔵室:1回(負荷投入)/試験
■冷凍室:1回(負荷投入)/試験
(各1分間)


今回の改正では周囲温度の2つの気温が30℃から32℃に、15℃から16℃とどちらも引き上げられました。さらに32℃の日数が180日から205日へと増加しました。この結果冷蔵庫の周囲気温は平均して22.4℃から25℃へと引き上げられたわけです。周囲温度が高くなればそれだけ冷蔵庫の冷却にかかる電気代も高くなります。こうしたことが冷蔵庫の電気代が平均して30%高く表示されるようになると見込まれる理由の大きな一因であると考えられます。

扉の開閉回数は従来は一日何回と細かく指定されていましたが、今回は1回にまとめられその分開閉する時間が長くなりました。これは国際規格(IEC)策定において複数回の扉開閉では測定結果にばらつきが出やすいため、1回にしてその分時間を長くする形にしたようです。この国際規格に準拠し、今回の改正でも扉の開閉は冷蔵庫、冷凍庫それぞれ1回と改められました。






最終更新日 2016/09/02
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生活知恵袋の管理人で管理人の名前も生活知恵袋といいます。料理雑学研究家です。2002年より当サイトを運営。野菜を中心に食品に関する見分け方や保存方法などを、実際の検証とともに解説した記事を多数執筆。光熱費や水道代の節約、衣服や住まい、掃除に関する豆知識も紹介。

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